WORKS
BOTANICAL/AROMA
-food lab.(cafe)-
M邸(リフォーム)
夫婦2人+ワンちゃんで暮らすMさん。こちらは、購入した中古物件のリフォームのご依頼だった。
↓のスライドショーで同じ場所から撮影したBeforeとAfterを並列させてみたのでご覧ください。
やったこと:
①構造の補強
②断熱改修
③間取りの変更
④白壁と板壁の映える内装デザインへ変更
デザインについて
元々の内装が40年代らしい、砂壁、襖、コテコテの建材といった感じであまり残したい要素がなかったため、
白壁、無垢の木材でシンプルに整えつつ、改修前の暗いイメージを払拭すべく、なるべく明るさを感じられるよう心がけた。
間取りと構造
写真奥がキッチン&ダイニングスペース。白い壁を挟んで手前側がリビングスペース。
写真右側はPCスペースと、その奥はベッドルームとなっている。
構造補強は、間取りとの兼ね合いでどこまでストイックにやるかいつも悩ましい問題だ。
ダイニングとリビングを仕切る壁も一体感を優先すれば無いほうがいいに決まってるがこの壁は取れなかった。
写真右手のPCスペースは左右の壁に囲まれているが、これは2階の荷重を受けるために増設したものだ。
この部分に関しては構造補強を優先して壁を作って、それから間取りを決めた。補強壁を目隠しとして北側にベッドを持ってくることで、ハーフプライベートなベッドルームを作り、完全に仕切りたい時はカーテンで仕切れるように、天井にカーテンボックスを造作した。
キッチンまわり
構造補強を優先して間取りを決めたため、キッチンで使える奥行きは最初からある程度限定されてしまう。
しかしキッチン天板や収納の奥行きは削りにくい。そこで取った解決策が2つ。
ひとつは回遊型のキッチンとしたこと。これで動線の重複を避ける。
もう一つは収納のデザイン。中段を省略した上下2つに分離させることで収納としての存在感を消した。
キッチン背面の収納は前板の木目がポイント。ホームセンタのラワン材の山から木目の良さそうなものを物色した。
光源もピンのスポットライトとしたらオブジェのような存在感を放つ収納になってくれた。
キッチンカウンターは梨の木。部屋の動線との兼ね合いで、奥行き細めにした。中央部に耳(外側)の部分を持ってきて、くぼんだデザインにした。
自分だったら毎日この耳の部分を触って過ごすかもしれない。
この梨の木もみなかみ町内産で、2020年に伐採したもの。建築で使うのはこのM邸が初めてだった。
オイルで仕上げたら上の写真のような杢目が浮き上がって、感動。
ギターを趣味で触るMさんは「自分のギターに欲しい杢目」と喜んでいました。
梨材のハナシ(M邸から脱線します)
すいません書いてたら色々思い出してウッときたのでこの梨の木について書かせてください。
この梨の木は僕の爺ちゃんが80年前くらいに植えた木でした。
2020年の夏にありえないほど大量の梨の実をつけ、葉をすべて落とし、ああ寿命なんだなと悟りました。
そんで特殊伐採できる先輩に
「何とか材木として残したいから、立地的に難しいかもですが、きれませんか」と相談しました。
クレーンで数十メートル離れたところからの、どう考えても大変な作業なのに、先輩は快諾してくれて、しかも経費を削減するために、役に立たなそうな僕に「交通整理なら出来るっしょ!」とバイトとして雇ってくれるという優しさ。全然役に立たないのに、寒いからとアルフォートとホットレモンを差し入れしてくれる優しさ。
結果、なんなく伐ってもらい、その後にうちで製材しました。
2016年に林業研修で一緒になってから、アロマ用の杉やクロモジを持ってきてくれたり、色々とお世話になった先輩との思い出の梨の木です。
枯れて、朽ちるだけの樹木の運命も、
伐採する人や製材する人、ちょっと人間が頑張れば、
その木の一生が永遠の時間の中に刻まれて、
見る人を感動させ続ける。
そういう、モノもヒトもずっとつながっていくような
仕事が残していきたいなと今は思います。
でも製材はマジで大変だった。一本の梨材を加工するためだけに、累計で1週間近くかかったんじゃないか?重すぎてフォークリフトがスタックして救出してを何度か繰り返し、雨に撃たれ、雪にやられ、心が折れかけること数度。親父と二人でなければ途中でやめてた。次回同じような材が出たら迷わずプロの製材所に頼むと思うし、もしも2020年に戻って先輩に会えるなら「あの、極力製材はしたくないので、伐採も無理しないでください」と伝えるかもしれない(笑)
スタックしたフォークをなんとか復活させようとする年末の夜。。。。
奥さんの実家にあった一枚板もテーブルに。
M邸の納屋に置いてあった松の一枚板。せっかくなら使いますか?という話になり、PCスペースのデスクとして再生されました。
写真右がPCスペース。両脇の壁は有孔ボードにしてフックがかけられるように。文房具などなんでも壁にかけておけるので便利。
断熱改修は内付けサッシ+断熱材
元々のサッシはシングルで天井にも断熱材が入っていなかった。補助金を活用して内付けLow-eサッシを追加し、断熱材は一般的なグラスウール。それで驚くほど夏涼しく冬暖かい住宅になった。特に薪ストーブはオーバースペックじゃないかというほど効きすぎていて午前中燃やすだけで午後も十分暖かい。自分の家にも薪ストーブが2台あるが、M邸と違い断熱材が全くない。そのためストーブを止めた時点から家の中が冬になるのとは、ここは大違いだ。
断熱材を施工する場合、屋外側で通気を確保することが必要条件になるが、M邸は小屋裏換気が十分に効いているようだったので問題なく施工できると判断した。
構造補強について
リフォームでは床下や天井をあけてみると「びっくり、玉手箱」は少なく「パンドラの箱」であることが往々にして多い。
だがそれは作り手を否定して終わる話ではない。時代なんだ。金物接合、接着剤に頼った合板や建材。今では当たり前のものが全国に普及した昭和中期から半世紀後、ここが答え合わせなんだと認識しないといけないと思ってる。
例えば↓のスライドショー。天井をあけてみたら2階の床梁が12cm角程度しかなかった。あけてしまった以上対策を考えなければいけない。そうなると勉強し直さなければならない。懐かしの構造力学。その上で現場で応用を考える必要がある。
リフォームで悩ましい構造補強のもう一つ。それは「どこまで強度を出すか」という問題。
木造建築の構造は、強ければ強いほど良いというわけではない。上から下まで(屋根から基礎まで)スルーで見てどうかという視点が不可欠だ。そして構造補強は完成形がクライアントに見えず、費用の効果が伝わりにくい(予算が割きにくい)という現実もある。
「構造上、本当は基礎があったほうがいいのに(ない)」というケースや「2階に壁があるから1階にもあるべきなのに(ない)」という状況によくぶつかるが、自分はそういうとき、強度を出しすぎない壁を1階に増設したり基礎は束に筋交で固める程度にとどめたりする。ただし忘れずに柱の根っこと頭の部分は金物で補強する。なぜかというと、強度を出す補強をするということは強度をあげた分だけ地震時に荷重が強くかかるようになるから。そして強くなった荷重がかかるウィークポイントが柱の端部となる。
リフォームはBetterを探し続ける作業
今回のM邸に限らず、リフォームは最初の時点ですべての絵を描くのはとても難しい。あり余る予算を使えるなら選択肢は増えるし悩む必要もなくなるが、現実にはそうではない。物件の状況を適切に把握した上で、ミニマムでやるべきことを考え、どこまで性能を付加したいか?どんな暮らしを思い描くか?構造はどこまで固めるか?作り手が時間をかけて悩み、Betterを探し続ける必要がある。
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